313:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/16(火) 23:12:08.94 ID:AhPKC+s4o
「有希、何でここにいるんだ。事務室のお姉さんたちのところに行っていなさい」
「やだよ。あそこにいてもつまらないんだもん」
「つまらないことはないだろ。いつもはあの部屋でテレビを見ているじゃないか」
「テレビなんか飽きたし、パパの女たちにも飽きた」
「結城さん悪いね」
太田先生が困惑したようにあたしに言った。
「お嬢さんですか」
「うん。有希、ごあいさつしなさい」
「やだ」
「有希!」
「ユキは今このお姉ちゃんと話してるんだもん」
「この人とパパは大切なお仕事の話があるんだよ。あまりわがままを言うともう事務所に
は連れて来てあげないよ」
「いいじゃん。パパの恋人じゃない女の人とお話するの久し振りなんだもん」
「・・・・・・やめなさい」
パパと小さな娘の会話じゃないな。あたしはそう思った。
この後、生々しすぎてあまり微笑ましくない父と娘の言い争いをあたしは聞かされた。
これが有希ちゃんとの出会いだった。結局太田事務所に就職したあたしは有希ちゃんと
仲良くなった。あたしの仕事は別に子守ではない。すべき仕事と目標とを与えられたあた
しだったけど、研修期間のつもりかどうか先生の与えてくれた仕事は主に基礎調査という
べきで、しかもスケジュールにもゆとりがあった。それで結果的にあたしは有希ちゃんが
富士峰女学院に合格して晴れて小学生になるまでの間、事務所で有希ちゃんの相手をする
ことになったのだ。先生の希望ではなく有希ちゃんのわがままが通ったせいで。
「結城さんのことは一緒に仕事をする前から目を付けていたんですよ」
あの日、やっと喋りつかれた有希ちゃんが応接のソファで昼寝を始めた後に、やれやれ
と呟いた太田先生がソファに崩れるように座ってあたしに話しかけた。
「目を付ける?」
何だか嫌らしい言葉に聞こえる。有希ちゃんの言葉が正しければこの人はまるで学者の
ように上品なな学究肌の見た目と、その社会的な名声とは裏腹にずいぶんと女にはだらし
ないらしい。しかも多忙なせいか身近なところで相手を調達する性癖もあるようだ。ひょ
っとしてあたしは太田先生にそういう意味で「目を付けられた」のだろうか。
「あ、誤解しないでくださいね。今の言葉に性的な意味はないからね」
あたしの心配を正確に読み取ったように太田先生が言った。
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