過去ログ - ビッチ・2
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320:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/24(水) 23:37:57.72 ID:WX+iqy8+o

 それほど業務量が多くなかったせいで、あたしは日中はいつも事務所にいる有希ちゃん
と仲良くなった。正直奈緒ほどじゃなかったけど、この子も十分に可愛らしい容姿の子ど
もだった。彼女の世話は事務の女の子たちが競うようにしてしていたけど、どういうわけ
かあたしは有希ちゃんに慕われたようで、彼女はよくあたしの部屋に来て日中の数時間を
過ごすようになった。いくら多忙ではないとはいえ数時間も仕事をしないわけにいかない
ので、あたしは当初戸惑ったけど太田先生は娘の動向をよく見ていたようで、あたしへの
業務を調整してまで有希ちゃんと過ごす時間を作るようにしたらしかった。

・・・・・・結局、太田先生はあたしの貧弱な肉体目当てでないことは確かだったけど、あた
しの能力というよりは保育士としての能力を買ったのではないか。あたしがそう邪推する
ほど、先生は有希ちゃんがあたしの仕事場の部屋に入り込むことを妨げなかった。

 それでも任された仕事の合間を縫って有希ちゃんのお相手をすることにあたしはしだい
に慣れてきた。別に司法試験の勉強をする気はなかったので、時間を取られることはあま
り気にならなかった。ひょっとしてあたしは保育士になればよかったのかもしれない。

生まれた直後に母親を亡くしたという有希ちゃんは、一見母性に対しての憧れや希求を
表に現すことはなかったけど、それでも生意気な態度ながらあたしに対して興味深そうに
すり寄ってくるのは無意識のうちに母親の代わりを求めていたのかもしれなかった。

 太田先生は有希ちゃんに対して一見甘やかしているようでいて、その実無関心とも思え
る放置気味な態度にあたしはどうでもいいと思いながらも、奈緒のことを思い出して少し
心が痛かった。なので、仕事の合間にあたしは有希ちゃんと真面目に向かい合おうと思っ
た。幸いに太田先生はあたしと有希ちゃんが仲良くすることを、喜んでいるようだったし。
少なくともそのことで先生に注意されたことはなかったのだから。

 結局、あたしは信じられないほど居心地と待遇のいいこの事務所にしがみつく他の事務
員の女性たちと同様、太田事務所にずっと勤めることになった。あたしがここに勤め出し
てすぐに有希ちゃんは富士峰女学院に入学して小学生になったこともあり、今までのよう
に日中を事務所で過ごすことはなくなった。それでも最初のうちは彼女は学校が終るとわ
ざわざ自宅から運転手さんに頼んで事務所まで来ていた。母親を亡くしたボスの一人っ子
ということもあって有希ちゃんが来ると相変わらず事務の女性たちは彼女をちやほやした
し、社員資格のある弁護士たちも有希に明るく声をかけた。ボスの娘ということだけでは
なく、それは有希ちゃんの持つ不思議な魅力のせいだった。

 この頃になるとあたしも有希ちゃんのそういう不思議な特徴というか性格に気がつくよ
うになっていた。小学校低学年の有希ちゃんを相手にしているのに、いつのまにか真面目
に頭を使って彼女の相手をしている自分に気がついたとき、あたしは有希ちゃんを子ども
扱いするのを止めた。あたしなんかが有希ちゃん相手の保育士になれるなんて一度でも考
えたことがおこがましい。これだけ頭の回転が速くて、しかも物事の本質を一瞬で把握す
る小学生なんて今まで見たことがなかった。有希ちゃんと話すたびに、あたしは昔読んだ
ことがある「恐るべき子どもたち」という古い小説のことを思い出した。

 それでもこの頃の有希ちゃんはその洞察力や理解力であたしを驚かせていたけど、行動
そのものは普通の小学生の女の子の域を逸脱するものではなかった。もちろん、初めてあ
った頃と変わらずその発言は際どい。実際、小学生相手とは思えない会話なんてしょっち
ゅうだった。そもそも、就学前から彼女は父親である太田先生の仮初めの恋人がここの女
性職員であることを知っていたのだし。それについては有希ちゃんの早熟さというより太
田先生の不用意な行動に責任があった。


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