40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/26(火) 00:11:15.17 ID:R3OcIW1Do
もう麻季は何も隠さなかった。これまでの彼女には博人に嫌われたくないという自己規
制がかかっていたし、進めるべきだと思っている筋書きもそれが博人との永遠の別れに繋
がる分、決定的な言葉を告げることを先延ばしにしたい感情もあった。言ってしまえばも
う今みたいに居酒屋で博人の食事の心配をするというささやかな幸せすら永久に失われて
しまうのだ。
『勇気を出して言ってしまいなさい』
その声につられて麻季はついに言った。
「相手が神山先輩なら恐くない。でも死んだ怜菜にはあたしはどうしたって勝てないもの。
自業自得なことはわかってるけど博人君とやり直せない以上、奈緒人と奈緒は一緒には過
ごさせない。でもあんなでっちあげた内容ではあなたに勝てないことはわかってた」
博人は黙ったままだ。
「だからあたしは雄二さんに再び近づいたの。博人君の心は怜菜から奪えないかもしれな
いけど、雄二さんをあたしに振り向かせるのは簡単だったわ。そして奈緒の実の父親であ
る雄二さんなら、奈緒の親権は勝ち取れるかもしれない」
「本当に心配しないで。今でも怜菜のことを愛していて彼女のことを忘れられないあなた
に約束します。奈緒のことは愛情を持って育てるし不自由だってさせない」
「今でもこの先もあたしはずっと博人君だけを愛してる。でももう他に方法がないの。だ
からもうこれでいいことにしようよ」
「あたしは自分のしたことの罪は受けます。凄くつらいけどあなたがあたしを許してくれ
るまではもう二度と奈緒人には会いません。だから奈緒のことだけはあたしに任せてちょ
うだい」
「いい加減にしろよ・・・・・・」
博人はその乱れた感情を反映しているかのように口ごもったまま辛うじて言葉にした。
「奈緒人のことよろしくお願いします」
麻季は最後に涙を流したまま頭を下げた。
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