50:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/27(水) 00:24:53.85 ID:rVw+N0iYo
第七章 奈緒と有希
その日の夕方、あたしは明徳町にある公立中学校の校門の前に来ていた。今日はずっと
奈緒の側についていようと思っていたのだ。でも、奈緒は回復していたとはいえインフル
エンザに罹っていたわけで、あたしがあまり長い間奈緒の側にいることに対して麻季おば
さんはいい顔をしなかった。
「有希ちゃんに移ったらまずいでしょ。また奈緒が元気になったらいくらでも一緒に遊べ
るじゃない。それに有希ちゃん、今日は学校はどうしたの」
あたしは奈緒の部屋から早々に追い出された。外に出ると前が見えないほど雪が降りし
きっていた。自宅に帰ろうと最寄り駅の方に向かって視界を遮る雪の中を歩いているとき、
ユウトから最初の写メが届いた。とても画像を確認できる状況ではなかったので、あたし
はとりあえず駅につくまではメールを開くことすらせず、ひたすら駅に向って歩いた。
ようやく駅の構内に辿り着いたとき、髪も服も雪だらけで真っ白になっていた。とりあ
えず濡れる前に自分の体から雪を振り払ってから、あたしはスマホを取り出した。
必死で歩いている間にユウトからの着信は十件を越えていた。急いで送信してきたせい
か本文には何も書かれていない。あたしは添付されている画像を開いた。ユウトのガラケ
ーのカメラのわりには上出来だ。残りの写真も一気に確認する。期待していたような決定
的な場面はない。でも、これはユウトを責めるのは酷だ。ユウトはこんな状況でもよくや
った方だろう。何時間か二人に張り付いてガラケーのカメラでこれだけ粘ったのだから。
あいつだってこんな地味なことをするよりは奈緒人さんを殴って、玲子を何とかしたかっ
たに違いないのに。
あたしはこれまでで一番よく撮れている画像を眺めた。奈緒人さんが玲子の肩を抱きな
がら二人で寄り添って歩いている画像だ。キスや愛撫とか、ホテルに入っていく写真ほど
のインパクトはないけれど、自分の彼氏が自分の実の叔母の肩を抱き寄せているこの写真
だけでも明日香を苦しめるには十分だろう。
あたしは予定を変えることにした。どうせ今日は富士峰をサボったので、商品の在庫を
チェックしようと考えていたのだけど、これだけいい写真が手に入ったのだから奈緒人さ
んが帰宅する前に明日香に見せてあげた方が親切というものだ。あたしは明日香の通って
いる公立中学校に向うことにした。この時間なら下校時間になる前に校門に到着できるだ
ろうし。
校門前で再び雪だらけになりながらあたしは我慢強く明日香を待った。
やがて明日香が降りしきる雪の中を傘をさしながら早足で校舎から出てきたことにあた
しは気がついた。
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