過去ログ - ビッチ・2
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62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/28(木) 23:56:34.27 ID:vWEKN95Po

『少なくともあたしの方は奈緒人のことが好きだったよ。こんな気持ちをあんたに知られ
たらドン引きされるだろうし、二度と叔母さんって呼んでくれなくなると思って必死で隠
していたけどね』
『あたしにとってもあんたにとっても大切にしなきゃいけない女の子がいるでしょ。明日
香とあんたが仲直りして結城さんと姉さんの家庭はようやく幸せな普通の家庭になろうと
しているの。だからここまでにしよう』



 玲子叔母さんの意思は明確だった。僕とどうこうなろうなんて全く考えてさえいない。
今日の出来事は今日だけの夢だと思わなければいけない。叔母さんが今日、僕のことを受
け入れていたとしたらという考えも繰り返し浮かんだのだけど、それは無益な考えだった。
叔母さんを喜ばせるためには僕は明日香と恋人同士でい続けなければならないのだ。

 そして奈緒。

 僕は奈緒のような美少女が何で僕なんかと付き合ってくれたのだろうとずっと考えてい
た。奈緒と手を繋いで有頂天になっていたときだって、意識の底では常にそういう疑問が
流れていた。積極的な奈緒の態度に自分を誤魔化してはいたけど、こんな冴えない僕に何
であんな可愛い奈緒が好きになってくれたのだという疑念は常にあった。

 そして今ではその疑念は解決した。僕の奈緒への想いはともかく、奈緒があんなに積極
的に行動するほど僕に惹かれたことには理由があったのだ。僕の記憶は解離性健忘とやら
のため曖昧だけど、幼い頃、誰よりも大切にしていた女の子の思い出はようやく浮かんで
くるようになっていた。それは幼い頃、無理矢理引き剥がされて会えなくなった仲のいい
実の妹の記憶だ。このとき僕はそのつらい出来事を思い出していたのだ。

 妹を車に乗せた母親。僕はそのとき何が起ころうとしているのか判らなかった。多分、
妹もそうだったのだと思う。それまでしっかりと抱き合っていた僕たちは引き剥がされ、
奈緒は知らない男の人が運転席にいる車に乗せられた。その瞬間、永遠に引き剥がされる
のではとようやく思いついた僕と妹は同時に叫び出していた。



『奈緒・・・・・・奈緒!』
『お兄ちゃん! 奈緒、お兄ちゃんと離れるのはいや』



 僕と偶然に再会した奈緒は無意識に僕に惹かれたのだと言う。ずっと兄である僕を忘れ
られなかった彼女は、兄以外の男性に惹かれたことに対して罪悪感まで感じていた。そし
て、そこが僕と奈緒の決定的に違うところでもあった。

 奈緒はずっと思い続けてきた兄に再会したことを素直に喜んだ。自分の初めての彼氏が
消滅してしまうのにも関わらず。僕も妹に再会できたことは嬉しかったのだけど、時間が
経つにつれ奈緒の中で彼氏としての自分が消滅してしまうことに焦燥を覚えた。客観的に
見れば奈緒は実の妹だ。そして彼女は素直に、昔引き剥がされた大好きな兄である僕と再
会したことを喜んでいる。そんな奈緒の気持ちに僕は飽きたらない感情を抱いてしまった。

 今にしてみればわかる。

 奈緒がこんな冴えない男を好きになって彼氏にしようとしたその意味が。奈緒は最初か
ら無意識のうちに兄貴を求めていたのだろう。実の兄貴になら高スペックを求めるまでも
ない。矛盾するようだけど僕が奈緒の兄貴でなかったら、奈緒は僕なんかを恋愛の対象と
考えることすらなかったはずだ。


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