914:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 09:12:08.21 ID:nQ4y3AGI0
葉瑠は顔を離し、俯いた。
きっと、葉瑠も状況のわからない友人たちを思っているのだろう。
特に、教室を出る時に阪本遼子(女子七番)は不機嫌さを顕にして興奮状態だったし、平野南海(女子十四番)は自分で立ち上がることもできない程に憔悴しきっているように見えたので、一層心配しているだろう。
「…じゃあさ、みんなを…探しに行く?」
おずおずといった感じで、優人が声を上げた。
千世と葉瑠の視線を浴びた優人は、へらっと笑みを浮かべた。
「なんかさ、俺ばっかダチの状況わかってばっかでずるい…ってのも変だけどさ…
結局俺は今迅しか信じられないけどさ、でもそれがわかってるだけマシだし…
じっとしててもどうしようもない…というかさ、うーん…」
しどろもどろとする優人に対して、葉瑠がとても大きな溜息を吐いた。
「このヘタレ!!…って早稀ちーが言うのもわかるわー。
『探しに行こうぜ、俺についてこい!!』とか言ったらどうなのさ」
「だってだって、葉瑠たちがそういう気持ちじゃなかったら俺空回りじゃん!!」
「何それ情けない!!」
「あー!! 葉瑠嫌わないで俺生きていけなくなるーッ!!」
「もー鬱陶しいなぁメソメソすんなっての!!」
優人と葉瑠のやりとりに、千世はふふっと笑んだ。
ああ、この感じ、何度も見たことがある。
教室の端からいつも見ていた、ムードメーカーの優人と葉瑠のまるで夫婦漫才のようなやりとり――日頃の2人のやりとりだ。
よかった、元気を取り戻してくれた。
「ほんなら、探しに行こ、みんなのこと。
プログラムなんてあかんって思っとる人、きっともっとおるはずやもんね。
会えたら、きっともっと元気になれるよ」
戦いたくない、どうしたらいいのかわからない。
だから、せめて、望むことをやりたい。
仲の良い子に会いたい、話をしたい、「プログラムなんておかしいよね」って言い合いたい――それがこの状況を打開することに何一つ結び付かないのはわかっているけれど、笑顔を浮かべていられることにはきっと結び付く。
「きゃっ、あたし千世のリーダーシップに惚れる!」「そんな、葉瑠ぅ…」、そんな2人のやりとりにくつくつと笑いながら千世は立ち上がり、荷物を持った。
雪美や古都美はどこにいるだろう、2人とも木々を掻き分けて道なき道を進む姿なんて想像できないから建物の中にいたりするのだろうか、そういえば古都美は虫がとても苦手で蟻が机の上を歩いていただけでも怖がっていたっけ――
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