989:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 12:52:57.13 ID:nQ4y3AGI0
龍輔は手にかけたばかりの真知子の死体をまじまじと見つめている。仕留めた獲物の大きさに満足するハンターのごとく、至福に満ち溢れた目つきをして。
圭子は自分の身体がぶるっと震えるのを感じた。当然だろう。全身から殺意を漲らしている猛獣のようなこの男を前にして、少しの恐怖も抱かないなど、気が正常である限りはありえない。
だが、圭子の中を支配する感情は、すぐに悲しみと恐怖のどちらでもなくなった。圭子の中を満たした感情、それは龍輔に対する怒りに他ならない。
「黒河くん! どうしてこんな酷いことを――どうして真知子を殺したのよ!」
口が勝手に動く。
龍輔は人を小ばかにするような顔をした。
「どうして殺したかだと? お前、それ本気で聞いてるのか? クラスメート同士で殺し合い、最後に生き残った一人だけが帰れる――これがプログラムのルールだろ。俺はそのルールに乗っ取ってごく自然に行動しただけじゃないか」
驚くほどすらりと言い放つ龍輔は、何が楽しいのかにやにやしながら、言葉の最後に「な。優秀なあんたなら理解できるだろ。委員長さん」と皮肉るように付け加える。
言葉の一つ一つに神経を逆撫でされた圭子は顔を歪めながら、微笑みつつこちらを見据えてくる龍輔のふざけた目を、きっと睨み返した。
「ふざけないでよ!」
「ふざけてなんていねぇよ。それよりもお前、頭がちょっとおかしいんじゃねぇか? プログラムに巻き込まれちまったら、自分が生きるためにクラスメートを殺さなければならないなんてこと、小学生でも知ってる常識だぜ。俺はあくまでも法に従ったのみ。なのにどうして俺が責められなきゃならねぇんだ?」
たしかに彼の言い分は、大東亜という国の中では常識とされている。しかし、圭子は反政府の人間ではないけれど、共和国戦闘実験についてのみは賛同できない。
三年も一緒に過ごしてきた仲間同士で命の奪い合いをするだなんて馬鹿げている。と、いつもそう思ってきた。だからこそ、プログラムに巻き込まれたことを言い訳に、簡単に殺しに手を汚してしまう者のことを、許すことが出来なかった。
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