過去ログ - 安価でシークレットゲーム5
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992:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 12:56:43.93 ID:nQ4y3AGI0
 そもそも龍輔に支給された武器はファイティングナイフ一本だけであり、いくら普段からナイフを使い慣れている(理由は聞くな)彼といえど、これだけでプログラムを戦い抜くということは難しいだろう。
 そんなわけで、他の参加者に支給された武器がいかなる物か見当も付かなかった彼は、プログラム開始当初は少なからず不安を抱えなければならなかったのだ。
 そんな中で手に入れた拳銃だ。プログラム内で支給されている物の中では、おそらく当たりの部類に入るであろうそれを手に入れた途端に、彼の自信が上昇気流に乗り始めたということは想像に難しくはない。
 だが彼がこの時に手に入れた武器はこれだけではない。
 風間雅晴のデイパックの中に入っていた白い粉。数年前から世間に出回り始めた新種のドラッグ『ホワイトデビル』。愛用者ひしめく裏世界では高額で売買されているそれをも、龍輔は手に入れていたのだ。
 知り合いに“運び屋”をしたことがあるという人物がいる龍輔は、この薬物について少しだけ知識があった。といっても、想像を絶するほどの快感を得ることができるということ以外には、「痛覚が薄らぐ」だとか「筋力が増強される」という話を聞いたことがあるだけに過ぎなかったが。
 だが彼は、それだけでもこのプログラム内では十分に使い道があるかもしれないと考え、溶かして液状にしたものを注射器内に溜めて、いつでも取り出せるようにと懐にしのばせていた。
 ところが、龍輔の期待の大部分が注がれていたのは、この薬物ではなく一丁の銃の方であった。
 生半可な知識しか持ち合わせていなかった彼は知らなかったのだ。この薬物がどれほど凄まじい効果を発揮するのかを。
 空が東の方から少しずつ明るくなってきた。時刻はもう午前五時半にさしかかろうとしているところ。担当教官の田中の話によれば、あと三十分もすれば島内に放送が入るらしい。そこでこれまでに死んだ人間の名前と、禁止エリアの時間と場所とやらが発表されるのだとか。
 いったい何人死んだんだろうな。数が多いに越したことはないんだが。
 龍輔はそんなことを思いながら、薄暗い森林内をゆっくりと進む。
 しばらく歩いてふと足を止める。突き刺さるような鋭い視線が自分へと向けられているように感じたからだ。
 近くに誰かいやがるな……。
 右手の銃をしっかりと構え直し、細心の注意を払って辺りを見回した。だが物陰にでも隠れているのか、相手の姿は全く見えない。
 本能が危険信号を発し始める。いつどこから来る分からない攻撃に備え、龍輔は四方八方に意識を向けながらじっと構えた。
 思った通りだった。龍輔の正面より右に四十五度の方角の茂みがガサリと動いた途端、銀色の鉄の棒らしき物が飛び出し、ものすごいスピードで龍輔へと向かってきたのだ。
 攻撃に備えて意識を集中させていたおかげで、襲い来る敵の攻撃をなんとかギリギリで避けることが出来た。
 大ヒット映画のアクションシーン並みの、半身を仰け反らせての見事な回避。監督が見たらさぞかし驚くことだろう。
 標的を射抜くのに失敗した銀色の凶器は、森林の奥へと飛んでいき、龍輔の立ち位置から十メートル以上離れたところに立っていた木に深々と突き刺さった。その正体は二枚の羽根をつけた矢だった。
 龍輔はすぐさま体制を立て直し、矢の飛んできた方向へと銃を構えた。そして続けざまに三発撃つが、手応えを感じない。相手のいる方向は分かったが、その正確な位置まで把握できていない状態では、やはり命中させることは難しい。
「おい誰だ! 隠れてねぇで出てきやがれ!」
 しかし相手は正体を現すどころか、返事すらしない。そのかわりだと言うのか、茂みの中から再び銀の矢が飛び出し、龍輔に襲い掛かってきた。


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