993:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 12:57:32.02 ID:nQ4y3AGI0
こんな所で死んでたまるかという思いから、プログラムのルールに乗っ取り、容赦なく同級生達を[ピーーー]と決めた龍輔には、迷いなく横に並んでくる人物の考えていることなど、頭を捻らずともすぐに分かる。
自分と同じく、このプログラムのルールに乗った。それ以外に考えられない。
だから彼はその時、自分よりも先に一歩を踏み出した御影霞と、それに遅れながらも堂々と戦場入りすることを決意した和歌子のことを、いずれ戦うことになるかもしれない強敵と見なして、警戒する必要があると判断した。するとどうだ。龍輔が強敵視した人物の一人は、今こうして他者を殺そうという考えのみに突き動かされる殺人機械となって、再び目の前に姿を現したではないか。これを案の定と言わずして何と言う。
自分と同じ考えを持つ者の出現に、流石の龍輔も気を引き締め、そして本気になって迎え撃たねばならなかった。そこにはもはや微々たる余裕もない。
一瞬だけ見えた相手の姿へと向けて、龍輔は走りながら発砲した。だが体制が悪かったためか、またしても外してしまったようだ。
「ちっ、クソがぁっ!」
毒づく龍輔。相手をなかなか仕留められないそのイライラは、射撃の腕の悪い自分へではなく、銃そのものへと向けられる。
そんな彼を嘲笑うかのように、再び茂みの裏へと姿を消してしまった和歌子が矢を放つ。
茂みの中から飛び出した矢は、先端の刃を鋭く光らせながら、恐ろしいほど正確に龍輔へと向かっていく。だが相手も走りながらの弓的のため、ほんのわずかなズレが生じたらしく、標的を射抜くには至らなかった。
頭の真ん中から狙いがずれ、顔のすぐ前を横切った矢は、龍輔に不気味な風圧を感じさせた。
武器の形態が違うとはいえ、その狙いの正確さに歴然の差があるのは明確だった。もちろん、相手の位置をどれだけ正確に把握できているかの違いも、お互いの狙いの正確さに差を生じさせていただろうが、それよりも、それぞれが自分の武器をどれだけ使い慣れているかということこそが、大きな差を生み出す原因となっていたのだろう。
誰もが存じている通り、龍輔は真面目に学校生活を送ってはいなかった不良だ。それとは違い、和歌子はプログラムに巻き込まれる以前、かつては学校中から将来を期待されていた陸上部のエースだった。
誰もに目を輝かして見られていた和歌子の地位は、生まれながらに持ち合わせていた才能のおかげで確立されたのではない。全ては彼女の血が滲むような努力が報われた結果にすぎない。
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