995:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 13:00:11.59 ID:nQ4y3AGI0
茂みの中から飛び出してきたのは矢ではなかった。それはその辺の地面にいくらでも転がっているただの石ころ。茂みの中から和歌子が投げたそれを、龍輔は矢だと思い込んでしまっただけだったのだ。
龍輔がそれに気付いたときには、時既に遅く、一瞬遅れて茂みの中から飛び出した矢が高速で迫ってきて、対処する暇すらない彼の手から拳銃を、神業とでも言うべき正確さではじき飛ばした。
手から離れた拳銃は宙を舞う。
龍輔はすぐさまそれを捕まえようと手を伸ばしたが、あと少しのところで届かず、最も信頼していたその武器は崖の下へと落下してしまった。
あの深い森の中に落ちてしまったなら、探して見つけ出すのはほぼ不可能だろう。だが今はそんなことをしている余裕はない。
ガサリという葉と葉が擦れ合う音を耳にした龍輔は、ゆっくりそちらへと視線を向けた。
右手にボウガンを携えた山姥が、髪に絡み付いた草木を手で払いながら、茂みの中から悠々と出てきた。龍輔は他に飛び道具を持っていないと分かっているらしく、無表情なその顔にも、どこか余裕があるように感じられた。そんな彼女の姿が、憎たらしく思えてならなかった。
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