10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:06:50.97 ID:y8XKonFyo
その体をがっちりと掴んで、出来ることならば引きずり倒すつもりであった。
倒してしまえば、あとは皆で蹴りつければいいだけだ。
だが、その指は真の体はおろか、衣服にもかすることはない。
あるはずの抵抗がなかったためか、その男は前につんのめるようになった。
バランスを崩した拍子に前に出た足を、真の足がひっかける。
男は見事にすっ転んだ。
しかも、隣の男を巻きこんで。
「へぇ……」
響は真の動きをはっきりと目にして、そんな感嘆の声を漏らした。
けして、目に留まらぬほど速いわけではない。
ただ、彼女の体を掴もうとした男の動きより、わずかに速かっただけ。
そして、男を転ばせたのも、タイミングを掴んだだけに過ぎない。
もちろん、やくざたちは真の動きを観察したり、理解しようとしたりはしない。
ただ、仲間が倒され、真を痛めつけるという目的をまるで果たせていないことだけが、意識にある。
「ね、もうやめようよ」
真は転んだ男たちが起き上がるのを痛ましげに眺めながら、そんなことを言う。
侮られているという屈辱が、男たちの頭にさらに血を上らせた。
「おるうぁあああ!」
意味をなさない恫喝の声をあげながら、リーダーが囲みに割り入る。
そして、その勢いのまま、真に殴りかかった。
残った男たちがそれに応じて一斉に拳を繰り出し、蹴りを放った。
稚拙ながら連携をとって、それぞれの拳や足が狙う場所も、それが真に届くタイミングもずらしつつ。
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