過去ログ - P「始原のiDOL」
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15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:14:22.24 ID:y8XKonFyo
 彼女の背後で、ビルの壁にびしびしとひびが走り、何本もの配管がはがれ落ちていった。

「ぐわふ」

 響の動きを目で追った巨猿が奇妙な声をあげる。
 あるいはそれは、彼女を嘲笑う声だったのかもしれない。

 向こうからやってきてくれた響の体を、巨猿は抱き留めようとする。

 それは、一見成功したかに見えた。

 響の体は、巨猿の、これも毛だらけの巨大な掌二つに覆われて、まるで見えなくなってしまっていたから。

 けれど、抱き留めているほうの巨猿がよろめくのはなぜだろう。
 その毛で覆われた顔が、ぼうと表情を失うのはなぜだろう。

「よいしょっと」

 軽い手つきで、響が巨猿の手を払い、二本のドラム缶のような腕がだらりとたれる。
 彼女は両腕が開くのにあわせて、音を立てて着地した。

 よく見れば、響の手に、なにかうごめくものが握られている。

 赤黒い液体を吐き出しながら脈動するそれに、真は目をむいた。

「それ、心臓?」
「うん」

 こともなげに言った響が、その手を握る。
 ぐしゃりとつぶれた心臓を、響は汚いものでも振り払うかのような手つきで地面に放り投げた。

「あれ、こいつ倒れないね」

 血に汚れた腕をハンカチでぬぐって、響は巨猿を見上げる。
 響の手刀によって心臓を抜き去られたそれは、動きを止めたまま突っ立っていた。


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