16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:15:45.56 ID:y8XKonFyo
「ほっといてもいいのかなあ」
巨猿は上を向き、口をぽかりと開けてだらだらと血泡混じりのよだれを垂れ流している状態だ。
響が手刀の一撃で心臓を抜き取った胸は、分厚い筋肉が反射的に盛り上がって傷が埋まってしまっている。
だが、そこからも赤黒い血が流れ落ちていた。
「まあ、いいか」
彼女自身のような真性の獣の民ならばともかく、こんな血の薄れた相手なら、放っておけばその骸は人間のものに変じるだろう。
そう判断して響は背を向けた。
血に汚れたハンカチを惜しそうに見つめた後でそこに放り投げ、真の方に向かおうとする。
だが、その時、真は見た。
「危ない!」
自らの声を置き去りにするほどの勢いで真は走る。
彼女が響を抱き留めたところで、それが襲いかかってきた。
「がっ!」
「ま、真!」
真に覆い被さられるような形になった響が悲鳴のようにその名を呼ぶ。
彼女の目からは、自分を守るように抱いている真のさらに向こうに、毛むくじゃらの巨大な猿がのしかかるようにしているのが見えた。
「なんで……!」
動くはずがない。
動けるはずがない。
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