過去ログ - P「始原のiDOL」
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17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:16:45.17 ID:y8XKonFyo
 この手で心臓を握りつぶしたはずの相手が、真の背を滅多打ちになどできるはずがない。

 だが、実際には巨猿は顔自体をどこかあらぬ方に向けたまま、真の背にその手のかぎ爪を打ち付けているのだった。

 その鋭く汚らしい爪が真の背を打つ度、鮮血が飛び、響にまで衝撃が届く。

「だい……じょうぶ、さ。ちょっと……待ってて」

 言い置いて、真はその腕に力を込める。
 そのまま放り投げられる響。

 地面の上を滑るようにして勢いを殺しながら、彼女は叫んだ。

「真!」

 その呼びかけににっこりと笑って、真は巨猿に向き直る。
 相手の攻撃は勢いだけはすさまじいものの単調なもので、響を抱えていない真はそれを軽やかによけていた。

 ただし、舞うように動く度に、背中からはおびただしい血が流れて地面を汚している。

「さすがに、これだけやられたら、お返ししないとね」

 真は太い腕の来襲をすいすいと避けながら、巨猿に接近する。
 獣臭がつんと鼻をつくほど近づいたところで、彼女はおもむろに足を止めた。

「はっ! せいっ!」

 正拳突きの二連撃。

 ただそれだけにしか見えない打撃が、巨猿の動きを止めた。

 その腰のあたり……打撃を受けた下腹のちょうど反対側が、音を立てて裂ける。
 そこから飛び出すのは、血と臓物と汚物の入り交じった液体。

 笛のような音がする。

 それは巨猿の喉から漏れる空気の音であった。

 それで全ての活力をはき出してしまったかのように、巨猿は、どろどろの臓物の上へと倒れ込む。


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