過去ログ - P「始原のiDOL」
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49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 23:09:17.43 ID:y8XKonFyo
 場違いなほど落ち着いた声が、すぐ傍でする。
 先輩アイドルたちののんきなやりとりに、蘭子はあっけにとられていた。

「しかたないか」
「しかたないね」

 二人は蘭子のほうを見やりながら、うなずき合う。

 なにがしかたないのか。
 そして、二人の安心させるような笑みの意味はなにか。

 蘭子が疑問に思い、それを形にするより早く、二人は刀を振るい続ける男に向き直った。

 その両者の背を見つめる彼女は自らの目を疑った。

 すでに現実とは思えない情景の中にあって、これ以上の驚きなどあるわけがないと、どこかで思っていたのだろうか。

 だが、それは起こった。

 美希の髪が、染め上げた金ではなく、蜂蜜のようにとろける色合いに変じる。
 響の髪からは色素が抜け落ち、銀の針を束ねているかのような風情へと変わる。

 二人がそろってそれぞれの髪をかき上げ、背に広げた瞬間。

 彼女たちの姿は消え失せる。

 金と銀。
 二つの輝きはそのままに、そこに存在するのは、もはや人ではない。

 獅子を理想化したら、あるいはこうなるであろうか。
 狼が神と化したなら、あるいはこのような姿であろうか。

 黄金の巨獅子と、白銀の大狼。

 しなやかな体と、そこに込められた力を感じさせる美々しき二匹の神獣。

 それが、そろって吠えた。

 轟々と耳を圧するその声に、慌てて耳をふさぐ蘭子。


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