過去ログ - P「始原のiDOL」
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51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 23:11:56.64 ID:y8XKonFyo
 もちろん、響たちにそれにつきあう義理はない。

 彼女たちは、即座に行動に移った。

 白銀の狼が男に向けて突進する。
 それを追うように、黄金の獅子が跳ぶ。

 男は――もし人の意識が残っているとするならば――半ば意識して、半ば無意識といった様子で、予定通りに刀を切り上げた。

 相手の動きを見つつ、その先を予見しての行動である。

 あるいは、響と美希の動きがそのままであったなら、男の目論見は成功していたかも知れない。

 恐ろしげな牙をむき出しにした狼の口を切り裂いて、まだ空中にある獅子の首を突くことができたかもしれない。

 だが、宙を飛ぶ獅子――美希は予期せぬ行動に出た。

 男に向けて跳ね跳んでいたはずの獅子の体が空中でひねられ、その真下を駆ける狼の背へと向かう。

 獅子の分厚い前足が狼の背に乗る。
 そのまま体重をかけられ、結果として急制動を受ける響。

 狼の頭は本来あるべきはずの場所にまで到達せず、刀の切っ先は、その鼻先を通過しようとする。

 そこで、狼の首がぐっと突き出された。

 刀を振る男の望んだタイミングより一拍遅く。
 響たちの狙い通りに。

 大きなあごが、鈍く光る鋼を呑み込む。


 キン――。


 白銀の狼が刀をかみ砕く涼やかな音が、全ての音を圧して響いた。


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