12:>>1[saga]
2013/03/10(日) 13:01:03.25 ID:DZ1OCmmz0
◇◇◇
視界の端を赤い閃光がよぎる。それが、最後まで残っていた部下の機体が爆発したことで起きた光であることは知っていた。
激昂――だがそれを操縦の精度に出さない為にも、言葉にして吐き出す。
「――墜ちろ!」
すでにロックオンは終えていた。隊長機であるこの機体にだけ積まれていたマイクロミサイルを余さず斉射する。
敵のフレアは尽きている。ほとんど何もさせて貰えずに撃破されたプルート4はともかく、2番機と3番機は手持ちの空対空ミサイルを全て吐き出していた。
特に先ほど撃墜されたプルート2は、自分を犠牲にしてまでこのチャンスを作ってくれた。
逃すわけにはいかない。
24の白煙が宙を舞い、敵機を目掛けて収束していく。
爆発――マイクロミサイルとはいえ、24発の一斉炸裂は周囲の青空をまるで夕日のように染め上げた。
確殺した感触に、僅かに笑みを漏らす。
だが、次の瞬間にその笑みが凍りつく。
爆音が響き、そして消え――入れ替わるように、あの忌々しいハンガリー国歌がキャノピーを振るわせたのだ。
火薬の燃焼による赤色が引いた空間に、敵機の姿は既にない。即座にレーダーを確認。
だが、その画面が急激にノイズに塗れ、敵の情報がかき消される。
(またか!?)
この奇妙な現象は、敵機と交戦してから幾度も起きていた。だからこそ、敵の特性を未だに掴めていないのだ。
(だがいくらか分かってきた。あいつは――)
その思考を遮るようなロックオン・アラートが耳を駆け抜けていく。
敵機は背後だった。いつの間にか、こちらの視界外から後ろに回り込んでいる。
左手で可変プログラムを立ち上げながら、即座に右手で操縦桿を倒しつつ、ラダーペダルを左右同時に踏み込んだ。
"脚"が前に投げ出されるように稼働し、推力ベクトルを機体前方に向ける。
キックバック――可変戦闘機による基本マニューバのひとつであるが、可変用のアビオニクスが未完成の為、
使いこなせるのは相当な経験を積んだ才能あるパイロットだけだ。
水平機動で左右に機体を振り回しながらの急減速に、敵機は攻撃を諦めたらしい。
急減速したプルート1を深緑の機体が追い抜いて行く。
(取った!)
瞬時に、視線入力で敵機を再度ロック。ガンポッドをフルオートで起動。
曳光弾によって形成された射線が、敵機に迫り――だが、回避される。
(速い! こっちの細かい動きまで完全に読まれてる。どういうことだ、背後に目ついているとでもいうのか!)
このままでは、自分も部下たちの二の舞になる。
ミサイルは撃ちつくし、完全に背後を取った状態からのガンポッド機銃による射撃すら通じない。これでは手の打ちようが――
(いや――賭けになるが、試してみるか)
敵機が旋回してくるのを見ながら、左手が、再び可変システムを起動。
僅かな時間でVF-0がその身を"鳥"から"人"へと移す。
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