過去ログ - マクロス・ノスタルジア
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9:>>1[saga]
2013/03/10(日) 12:56:05.13 ID:DZ1OCmmz0
◇◇◇



 ケストヘイ、というのはハンガリー西部に位置する町の名前である。

 中央ヨーロッパ最大の湖であるバラトン湖の西岸に位置する、観光客で賑わうリゾート地だ――リゾート地"だった"。

 だがその上空で観光地に相応しくない鋼鉄の群れが飛び交っているようでは、もはや観光地を名乗れまい。

 宙を舞う物の正体は戦闘機だ。数は五。その内のひとつと、編隊を組んだ残りの四つが相対し、いま正に空戦の火蓋が切り落とされようとしていた。

 それぞれの機体には所属を表すマークが描き込まれている。

 編隊を組む銀色の四機には、赤い丸の中に白い三角形が描かれた統合軍のマーク。

 そしてそれらに対してたった一機で格闘戦を挑む深緑色の機体に描かれるのは、剣のような反統合軍のマークである。

「出やがったな、音楽家気取りめ」

 その深緑の機体を睨みつけた統合軍機パイロットの一人が、そんな言葉を漏らす。

 相手の反統合同盟軍機は、ここ数日、まるで統合軍を挑発するかのように、
 これ見よがしに出現しては統合軍の拠点の上空を飛行する、という行為を繰り返していた機体である。

 おまけに、これだ――先の台詞を呟いた男は、キャノピー越しに操縦席を満たす大音量に顔をしかめた。

 Isten, aldd meg a magyart―― "神よ、我らを祝福したまえ"

 思わず舌打ちする――あの反統合野郎は、機体に付けたスピーカーからハンガリー国歌を流してやがるのだ!

 その意図は考えるまでもない。ケストヘイの住民へ反旗を促す為のアジテーションである。

 ハンガリーは最初から統合軍側につくことを選択した国家だが、国民がそれを快諾したわけではない。

 もとより戦争の始まる前から統合軍と反統合軍の、手合い違いともいえるような戦力差は話題になっていた。

 ハンガリーは理念に賛同したのではなく、銃を突きつけられるようにして統合軍側に下ったに過ぎないのだ。

 無論、そうだからと言って国民が実際に反乱を起こすかと言われれば疑問だが、どのみち、ここまでされて黙っているわけにもいかない。

 そうして、ケストヘイの統合軍はすぐさま戦闘機を上げ――その悉くが撃墜された。

 まあ悉く、と言っても、もともとケストヘイにそれほどの戦力が常駐していたわけではない。

 というより、既に統合戦争もほとんど終着しており、軍隊を駐留させる必要などないのだ。

 現在それなりの戦力が備えられているのは、未だ散発的なゲリラ攻撃が起きる南アフリカか、
 守護すべきSDF-1の存在する南アタリア島くらいのものだ。

 ケストヘイにある程度の軍備があったのは、ここで『とあるプロジェクト』が進められていたからに他ならない。

 もっともそのプロジェクトも数ヶ月前に終了し、ここに彼ら統合軍が残っていたのはほとんど偶然に近いものだったのだが。



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