922:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 11:08:22.28 ID:868/ISGe0
音哉は溜息を吐いた。
なぜ15歳という歳で、せいぜい風邪をひいたことがあるくらいの健康体である自分が、戦いを強要され、死と隣り合わせにならなければならないのか。
…チッ、わかってる…アイツらの…政府のせいだ。
蘇る紅い記憶。
権力に怯える自分の姿。
歯向かうことのできなかった、弱い自分の姿。
「…ねぇ、音哉くん?」
愛美に呼ばれ、音哉は顔をそちらに向けた。
愛美は首を傾げた。
「ずっと気になってたんだけど…
音哉くんは昔は須藤くんたちと一緒に悪いことしてたんでしょ?
何で今は大人しくなって、生徒会長までしてるの?」
「悪いことって…せいぜい喧嘩くらいだって。
荒れに荒れてた大和のストッパー役。
でもまぁ…聞く?」
音哉は記憶の引き出しを引いた。
できれば封印していたいけれど、なくなってほしくはない記憶。
音哉の転機。
人生の目標を掲げるきっかけ。
小学生の頃の音哉は、決して馬鹿ではなかった。
教師たちに反抗するようなことは表向きはしなかったし、勉強もそこそこできた。
ただ、素行はあまり良くなかったので、教師受けは悪かった。
須藤大和(男子7番)・山神弘也(男子17番)・野原惇子(女子16番)といった、教師受けの悪い連中とつるみ、暴力という手段を使って、反抗してくる者たちを屈服させていたのだから。
そんな音哉の家族構成は、自分と父母と祖父。
祖父は数ヶ月前に祖母が他界したことをきっかけに、同居するようになった。
歳に比べれば若々しい雰囲気を持つ、元気な老人だった。
音哉は祖父が大好きだった。
何故か父母には祖父とあまり関わるなと言われていたが、その忠告は無視した。
理由がわからなかったし、そういう父母の方が好きではなかったので、反抗したい気分になったからだ。
祖父は優しいわけではなかったが、同じ目線で話せる人だった。
「音哉、お前また喧嘩かァ?
ほら顔見せなさい、消毒してやるから」
「…ってぇ…染みる…!
喧嘩したっていーじゃん、年寄りの小言なんか聞きたかねぇよ!」
「年寄り言うな、クソガキ!
俺のハートはいつでも若々しいんじゃい!
大体喧嘩が悪いなんざ言ってないだろうが。
俺が若い時にゃ毎日のようにバトルしとったもんだ」
「へぇ、若い時なんてあったのかよ」
「馬鹿たれが!
こんなダンディーが小学校にいたら怖いだろうが!」
「ダンディーって…自分で言うなっつーの」
口喧嘩のような会話が楽しかった。
音哉の弁舌は、この頃形成されていったのかもしれない。
大好きな祖父だった。
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