過去ログ - 安価でシークレットゲーム6
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980:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/06(火) 16:21:20.00 ID:D/J1TKXp0
銃声。
音哉の背中に隠されていたので、その様子は見ていない。
だけど、わかった。
音哉が、シグ・ザウエルP230の引き金を引いた。
そして、健太郎は動かなくなった。

「お…とや…くん…」

「来るなっ!!」

傍に寄ろうとした愛美に、音哉が怒鳴り、愛美は止まった。
同じく紗和子も立ち上がろうとしていたが、動きを止めた。

「見ない方がいい…」

音哉はもう一度言うと、背中側のベルトにシグ・ザウエルを挟み、ポケットに入っていたハンカチを出して広げ、健太郎の頭にそっと被せた。
そして、健太郎が手に握り締めていたグロック19を指から引き離し――1本ずつ引き剥がしていた、嫌な作業だ――、それを手に取り、立った。
音哉が立ち上がって、愛美は倒れる仲間(元、か)の姿を確認した。
ハンカチの下、床にゆるゆると血の池が広がり始めていた。

音哉はゆっくりと下がり、愛美の横に来た。
小さく息を吐いた後、床に落ちていた煙草のケースを拾い、中から1本出すと、同じく胸ポケットに入っていたライターで先に火を点けた。
鼻をつく煙草の匂い。
だけど、愛美は今度は何も言わなかった。
それが、何とかして気分を落ち着けようとする努力に思えたので。

「仕方が…なかった……」

愛美は音哉のライターを持つ手にそっと触れた。
僅かだが、小刻みに震えていた。
当然だ、クラスメイトを、それも良く知った仲間を手に掛けたのだから。

「1人で背負うことないのよ…?」

愛美にはわかった。
音哉は健太郎を撃つ時、それを自分以外が見なくて済むように角度を計算していた、ということを。
口は悪くなっても、『自分にとって得になることしかしない』と言っても、やはり周りから信頼を得ることができる天性の人徳は変わらないのだろうか。

「見殺しにした、わたしたちも、同罪…だと思う…」

紗和子も呟いた。
その声が僅かに震えていた。
視線は健太郎に注がれていた。
音哉が1人で罪を背負うことのないよう、その姿を目に焼き付けているのだろうか。


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