過去ログ - 伊織「さようなら」
1- 20
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:52:19.87 ID:fz9LGbgw0

まだ、シェフはいるようだった。
食器や調味料、食材のしたごしらえなどをしていたらしい。
私に気付いて、声をかけてきた。

『お嬢様、何かお作りいたしましょうか』
どうしてわかったのか、と思ったけれど、深夜に食堂にいるのだから当然よね。
とりあえず、思っていた事を口に出した。

サンドイッチを食べたいのだけれど、自分で作って食べてみたいの。協力してくださらない?
彼は驚いているようだったわ。無理もないわよね。
今までわがままだった小娘が、いきなり態度が変わったのだから。

私は続けた。
怪我をしたら、きちんと私の責任であったことをパパに伝えます。だから。
何度も頼み込んで、ようやく折れてもらった。
味を詳細まで思い出して、彼に伝えた。こんな感じだった、あんな感じだった。
彼は言う通りに味を生み出していった。

私は本当に驚いた。見聞きしただけで、ここまで味を表現できるのね、と。
こんな一流の人間に対してわがままをしていたのか。そこでも気付くことが出来た。
気付いた時点で、今までの非礼を詫びた。そして、ありがとう、と。

包丁を使うことに慣れていなかった私だから、パンは若干ちぎれていたし、
野菜も綺麗に切ることは出来なくて…形も、見栄えもあまりよくはなかった。
でも、彼は懸命に、丁寧に私に1つずつやり方を教えてくれた。
仲直りも兼ねて、彼と一緒に食べることにした。

美味しいです、そう言って微笑んでくれる彼も、また優しい人だった。
味も形も似せることは出来なかったけれど、これもまた、格別の味だった。




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
40Res/36.40 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice