過去ログ - 春香「これからのきみとぼくのうた」
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37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/03/16(土) 12:22:18.29 ID:bwJZNukvo
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運命のあの日。
「……」
彼は事務所の入った建物の屋上で夏の夜空を見上げていた。
「……うーん、どうしよう」
私はどうやって声を掛けようかと、扉の奥で考えあぐねていた。
「……?」
すると、彼はてのひらを見つめ、一時の後、そのまま片手を空へ伸ばした。
まるで星を掴むかのように。
「なにをしているんですか?」
「……春香か」
いつもなら体を震わせて驚くところだけど、その時の彼は不意をついた私の声にも冷静でいられた。
変なところを見られたな。なんて、恥ずかしそうにすると予想をしていたのに。
「……ほら」
「……」
彼は私にも夜空に視線を送るよう促すだけ。
この日はいつもと違っていた。
いつもの彼ではなかった。
「あれが、夏の大三角形の一つ、こと座のベガだ」
「……」
彼の差す方へ辿っていくけど、私にはその星座が見つけられなかった。
「どれですか?」
「大きく瞬いてる三つの星は確認できるか?」
「えっと……多分、あれと……多分…あれ……はい。多分、確認できました」
「多分が多いな……。その西側の星、あれがベガなんだ」
もう少し星について勉強していれば、彼と会話ができたかもしれない。
彼が私に気を許してくれれば、彼が抱えていたモノを知ることができたかもしれない。
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