157:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:31:53.03 ID:7LnCOhGJ0
「―――まぁ、律子君を信じよう。
さぁ、食べてくれたまえ。音無君ほど上手にできなくてすまないが」
無骨に切り分けたリンゴを、高木はプロデューサーに差し出した。
プロデューサーが、恐縮しながらリンゴに手を伸ばそうとした時、高木の携帯が鳴った。
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2013/03/24(日) 02:33:36.86 ID:7LnCOhGJ0
スーツ姿の男性が、血溜まりの中にうつ伏せで倒れている。
その横で、金髪の少女がまっすぐにこちらを見上げている。
少女の顔は真っ黒に塗り潰されており、表情は分からない。
しかし、明らかに階段を上った先―――踊り場にいる自分を睨み上げている。
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2013/03/24(日) 02:34:47.31 ID:7LnCOhGJ0
【8】
「俺は、娘がアイドルになることに初めから反対していた」
雪歩の父は、律子の目を見据えて言った。
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2013/03/24(日) 02:36:34.26 ID:7LnCOhGJ0
萩原家は、足立区の静かな住宅街にあった。
インターホンを鳴らすと、黒いスーツに身を包んだ坊主頭の若い男が出てきた。
細身だが、目の鋭い男だった。
名前と用件を告げると、丁寧に中へ案内された。
161:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:39:30.53 ID:7LnCOhGJ0
雪歩の父は、背の高い男だった。
年齢は50歳前後のはずだが、そんな年には見えなかった。
肌のつや、身のこなし、そして何よりも引き締まった端正な顔立ちを見ていると、30歳代の前半くらいにも見えた。
雪歩の父の後ろには、それまで律子を案内していた坊主の男がずっとついていた。
162:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:41:25.18 ID:7LnCOhGJ0
フン、と雪歩の父は小さく鼻を鳴らした。
律子は、目の前の男の一挙手一投足から目が離せなかった。
いつ、どんなに危険な一振りが繰り出されるか知れなかった。
その時、入り口の襖がスーッと開いた。
163:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:44:26.03 ID:7LnCOhGJ0
「俺はあなた方を憎んでいる」
律子が湯飲みを置いたのを見計らい、雪歩の父が突然切り出した。
律子は、黙って頷いた。
内心は、改めて面と向かって言われたことで、さらに緊張が増していた。
164:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:47:16.41 ID:7LnCOhGJ0
「雪歩さんは――」
律子は、膝の上に置いた手を握り締めた。
「―――雪歩は、私達の事務所の現状を憂いていました。
自分が何とかして変えなくてはと、きっと自分にそう言い聞かせ、これまで頑張ってきてくれていたのだと思います」
165:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:49:43.19 ID:7LnCOhGJ0
「政治家みてぇな事を抜かしやがって」
雪歩の父は、鼻を鳴らした。
「なら、あなたは今日ここへ何をしに来たのだ。
娘を連れ戻すでもないのなら、わざわざ自分の決意表明を俺に聞かせにきたのか?」
166:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:51:06.67 ID:7LnCOhGJ0
「―――確かに渡しておく。
確認をするが、あなたは雪歩がアイドルを続けなくとも構わない、それで良いのか?」
「はい。ですが――」
そう言いかけて、律子は笑みを浮かべた。
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