92:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:16:26.76 ID:7LnCOhGJ0
プロデューサーは「えっ」と間の抜けた声を上げた。
一度、こんな事があったのだと律子は語る。
深夜、ようやく残務を整理し、一人帰宅する準備をしていた所に、事務所の電話が鳴った。
出てみると、いつも使っているレッスンスタジオからだった。
「お宅の雪歩ちゃんが、あんまりにも頑張るもんだから、こっちも声をかけ辛くてねぇ。
ようやく、さっき帰ったところなんですが」
スタジオの管理人は、特にクレームを言うつもりではないのだが、困ったような声で悩みを明かした。
電話を取った律子は、ただただ受話器を構えながら何度も頭を下げた。
延長した分の使用料はお支払いしますので、と律子は申し出たが、管理人は笑ってそれを押し戻した。
「別に金をもらいたい訳じゃないんだが、ちょっと心配でねぇ。
あの子、親御さんが厳しいんじゃなかったっけねぇ」
「その日は俺もレッスンに付き合ったが、俺が帰る前に雪歩は帰ったぞ」
プロデューサーは、律子の話を信じる事ができなかった。
「たぶん、プロデューサーが帰ったのを見計らって、あの子がまた戻ってきたんじゃないでしょうか」
「何でそんな事を――」
「プロデューサーに、心配をかけたくないからでは?」
律子の一言に、プロデューサーはまさかと思った。
「そんな、わざわざ面倒な事を――」
「する子ですよ、あの子は」
雪歩は気ぃ遣いであると同時に、ああ見えて意外と頑なな面があるのを、プロデューサーも良く理解していた。
プロデューサーに余計な心配をかけたくないが、遅くまで練習もしたい。
その二つを両立させる方法があれば、たとえ回りくどくても彼女はやるかも知れない。
だが、なぜそこまで根を詰めるのか。
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