過去ログ - 大学教授「私がアイドルのプロデューサーだと」
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◆HdrJTu3Tbs
[saga]
2013/03/31(日) 12:59:47.46 ID:KMurB9r40
そう言うと高木は一息ついて言った。
「高校時代を覚えているかね。すっかり昔の話だが」
当然だ。
以下略
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◆HdrJTu3Tbs
[saga]
2013/03/31(日) 13:31:36.57 ID:KMurB9r40
「君と出会ったのは2学年のころだったかね。いろいろあったものだが、卒業の日に君は一本のカセットテープをくれたろう」
憶えている。1970年代のことだ。ビートルズの時代が終わったころ、私は当時歌手を目指していた高木と一緒に、あるロックバンドを結成していたのだ。といっても、本当にやる気があったのは高木だけで、私を含めた他のメンバーは嫌々付き合っていたのだが。
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◆HdrJTu3Tbs
[saga]
2013/03/31(日) 13:32:59.70 ID:KMurB9r40
しかし、私は音楽のことなど全く分からないながらも高木の歌を聴いて彼は本物だと思った。
結局楽器すら調達出来ずにバンドは解散するのだが、作詞とドラムを担当することになっていた私は、高木に歌ってもらうために1つの詞を作った。
気恥ずかしくて渡すタイミングを失ったのを、最後になるからと自分で朗読して卒業の日に渡したのだ。当時は電話も何もかも不便だったから、手紙を書いたりカセットテープに声を吹き込んで別れの際に交換し合ったものだ。
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◆HdrJTu3Tbs
[saga]
2013/03/31(日) 13:34:31.41 ID:KMurB9r40
それから高木は歌手を目指して上京し、私は京都の大学へと進んだ。
もう30年以上前の話だ。
まさか今になってそんな恥ずかしい話をする訳でもあるまい。
「何が言いたい、高木」
以下略
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◆HdrJTu3Tbs
[saga]
2013/03/31(日) 13:35:37.31 ID:KMurB9r40
少し、驚いた。
私は今、何を感じたのだろう。まるで高校時代に戻ったかのようなあの感覚。あの時私の心を揺さぶった高木の歌が今、確かに聞こえた。
25
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◆HdrJTu3Tbs
[saga]
2013/03/31(日) 13:37:02.05 ID:KMurB9r40
少し、間が空いてしまった。私は冷え切ったコーヒーをかき混ぜながら
「つまり、私に作詞の才能はないということかね。デビュー曲、売れなかったんだろう」
高木は乾いた笑いを発してその場を濁した。
以下略
26
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◆HdrJTu3Tbs
[saga]
2013/03/31(日) 13:38:39.98 ID:KMurB9r40
「まあ、それはともかくとして。私は君と仕事がしたいのだよ。君は私がティンときた数少ない人間の一人だ。君のような人材を一から探すのは大変な苦労なのだよ」
どうやら高木は昔と変わっていないようだ。初めて会ったときも「ティンときた」などと言って話しかけてきたのだった。
その時のことがふと頭に甦り、変わったのは私なのかもしれないと思った。
27
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◆HdrJTu3Tbs
[saga]
2013/03/31(日) 13:39:51.65 ID:KMurB9r40
「しかし高木、お前がどんなに言おうとも私は大学教授を辞めるつもりはないよ。これは私の天職だ」
そう、私は大学教授という職業に誇りを持っている。学問一筋にひたすら精進を続け、大学教授になったのだ。
変わることは悪いことではない。私は今の立場に、十分満足しているのだから。
28
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◆HdrJTu3Tbs
[saga]
2013/03/31(日) 13:41:30.93 ID:KMurB9r40
高木は街頭に目を逸らして、思案している風である。
満足している。私は満足しているのか。実際のところ、学問をする悦びというものに出会うのは五年に一回くらいである。その悦びのために生きていると言ってもいいほどの驚きと感動ではあるが、私は本当にそれに満足しているのか。
29
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◆HdrJTu3Tbs
[saga]
2013/03/31(日) 13:42:41.29 ID:KMurB9r40
いや、学問の悦びだけではない。
私が大学教授という職業に誇りを持っているのは、後進の育成の点においてである。私という器に入っている知恵を若者の器に余すことなく流し込んで行く作業、これこそが私の悦びである。
私より大きな器を持つ者に数多く出会った。そのような者に出会う度に、私は大学教授であることを誇りに思うのだ。
私は彼らを応援することができる。彼らを羽ばたかせることができる。そして彼らを輝かせることができるのだ。
若者の育成こそが私の悦びである。そう、私は満足している。しているのだ。
30
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◆HdrJTu3Tbs
[saga]
2013/03/31(日) 13:43:52.52 ID:KMurB9r40
高木はゆっくりと私に視線を戻して、
「うむ。君は素晴らしい大学教授だよ。教育者としては一流の人間だろう。だが君の天職は大学教授ではなく、アイドルのプロデューサーだと私は断言しよう。
彼女たちの可能性は無限大だ。底知れぬ器を持っているのだよ。
彼女たちを応援して欲しい。彼女たちを羽ばたかさせて欲しい。そして彼女たちを輝かせて欲しい。そう、人の心を揺さぶるほどに」
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