過去ログ - のあ「……たいせつなものは、目に見えない」
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/04/18(木) 22:36:08.20 ID:Sxr2n2vlo
――小梅からすれば、彼女は『あまりよく知らない人』だ。
仕事でもほとんど一緒にならず、遠目に見ることはあっても、なかなか話す機会がなかった。
同じ事務所に所属するアイドルでも、そういう相手は何人かいる。
仲良くなりたい、という気持ちも勿論あるが、
一回り近く年上の人間に対して、いったいどんな話題を振ればいいのか。
アイドルになっていくらか改善されたものの、
まだ他人と話すのが苦手な小梅には、難易度の高いことである。
視線を誤魔化すようにまた一口茶を飲み、小梅は意を決した。
「のあさん……な、なんの本、読んで……るんですか?」
答えてもらえないかも、と内心びくびくしていたが、
どうやら彼女も話題に困っていたらしく、思いの外優しい手つきでカバーを外し始めた。
外しながら、
「……LE PETIT PRINCE」
「る、ぷ……?」
「……星の王子さま、と言った方が……伝わるでしょうね」
「あ……聞いたこと、あります」
向けられた表紙には、散りばめられたきいろい星と、まるい岩のような星。
そこに咲く数輪の花と、煙を噴く小山。
そして灰色の地面に立つ、金色の髪の男の子が描かれている。
サン=テグジュペリ作、星の王子さま。
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