過去ログ - 錆白兵「ここはどこでござるか……」神裂火織「必要悪の教会女子寮ですが……」
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405: ◆4ipphlbOc2[sage saga]
2014/06/07(土) 01:28:24.35 ID:B/7z9PeX0
「ぁ、ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!」


脳の血管が百万本くらいブチ切れる程の絶叫を上げる。これが文字通り魂を込め、命を賭けた一撃だ。これ以上剣は触れない。そもそも100kgの物体を持ち上げるのさえ不可能だ。その不可能を無理で抉じ開けて、ここまで来ている。すでに自分の限界は飛び越えていた。


こうして、柔と剛の剣は激突する――――。


―――剣を振り抜いたマールスは炎剣グラディウスの柄を持ったまま、硬直していた。

既にその身に炎は無く、赤壁だけが彼を包んでいた。

炎剣の騎士は呟く。


「一応、言っておこうか」


その呟きの向こうには誰もいない。誰もいないまっすぐ前を見据えて、マールスは独り言を呟く。

否、これは独り言ではなかった。


「―――ひとつ、訊きたい事がある」


真っ直ぐを見据えたまま、“グラディウスの刃の上に乗る錆白兵に問うた”。


「奇遇でござる。拙者も是非とも訊きたい事があった」


全ては一瞬の出来事であった。

薄い刀で斬りかかる錆の攻撃は実はフェイントで、斬りあげたマールスの大剣を左手に持っていた鞘で突きながらそれを躱し、気付かれぬよう刃に着地して斬りかかろうとしていた。

それだけでも神業である。如何なる剣の流派の達人とて高速で動く剣を完璧に見切っただけでなく、剣の上に乗ってしまうのは、冗談を通り越してしまっていた。しかも錆は全く気付かれない様に気を殺していたのだというのだから、すでに錆の歩法は神の領域に達していた。

だが気付かれた。完全に消していたつもりだった気配をこの男はわずかな殺気で感知したのだ。遠く及ばないものの、この男も確かに剣の達人であった。


「お主の真名は何と呼ぶ」

「………」


そうか、マールスとは偽名であるのと気付いていたか。そう、この名は神の力を降ろす為の偽名である。騎士は素直に答えた。


「マルコ=マメルス」

「ではマルコ=マルメス殿、訊きたい事とは?」


マルコは一人の剣の達人として、訊いた。


「その一瞬で消える技、なんて言うんだ」


普通の走り方はどうしても片足に体重が乗る。前に足を踏み出した時、足音だったり足跡だったりが残り、そして一歩一歩が大きく進める。だが錆の初動がない走り方は異様だった。人の動作には必ず初動が必要であり、それをみて次の行動を予測できるのだがそれを錆はさせなかった。また彼の走りには体重の移動が全くなく、一歩一歩の歩幅は小さいが、それ故に前後左右の移動が自在であり、微風のように軽やかに、足音を出さず、足跡も残さない。そしていつの間にかそこにいる。

これは極東の島国に伝わる『合気道』と『古武術』の歩法によく似ていた。居合道の神域に辿り着いたある達人のは乱捕の際、実際に相手の視界から消えると言う。

そこで襲われたらおしまいであり、そして先に斬りかかっても簡単に躱されて斬られる。

要はカウンター不可の早出しの権利と、先制攻撃をいとも簡単に躱して返してくる全攻撃に対してカウンター可能の遅出しの権利をもつのである。

視界の誘導と一緒に使われれば、もう斬られるしかできない。

その技を錆はこう名乗った。


「爆縮地」


いったいどんな修練を積めば、そこまでの境地に辿り着けるのか知りたかった。その歩法を習得できれば、自分はさらに強くなれる。そうなればさらに強い戦士と戦える。

マルコはそんな事を考えていた。歩法一つをここまで昇華させる錆の神業を、是非とも我が物にと我ながら珍しく願っていた。


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