24: ◆auvPFY1.jw[saga sage]
2013/04/26(金) 15:04:19.85 ID:apyY2YgH0
『はい。お付き合いしている方はいません』
「なら、俺!…俺とか、どうですか」
最初はテンションのみで聞いていたのだろうが、二言目のトーンは本物だ。
プロデューサー業をしていれば声の抑揚1つでわかってしまう。
ああ、彼はなんてことを聞いているのだろうか。
『ええと…そう言っていただけるのは、嬉しいです』
ちひろさんは困ったような、けれど嬉しそうな顔で微笑んだ。
ああ、どうして彼にそのような顔を見せるのか。
ぼくは、大人気もなく嫉妬していた。
「じゃあ!あとで、連絡先を交換してもらえませんか」
全員の視線がそこに集まっていた。
彼女はどう答えるのだろうか、という視線が。
ぼくは、内心で神に祈るしかこの想いを抑える方法がない。
『はい。もちろん、いいですよ』
ぼくの祈りは、どうやらそう簡単には通じなかったらしい。
彼女は笑顔で彼と名刺の交換を行っていた。
そしてまた、喧騒は舞い戻った。
…その中に、ぼくの声はなかった。
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