10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/18(土) 08:02:26.92 ID:0FhXK3hqo
◇
「最近、嫌な夢を見るの」
その朝はいつもより雨が弱かったので、わたしとシラユキは傘を差して森の中を散歩していた。
屋敷の裏手に広がる森には、生きているものの気配がしない。
鹿や兎どころの話ではなく、小鳥の鳴き声さえ聞こえないのだ。
「どんな夢ですか?」
シラユキは、木々の梢からかすかに差し込む、雨の日の淡い陽射しを見上げていた。
わたしもそれを真似して空を仰ぐ。
薄い雲が広がって、空は真っ白だったけれど、雨の雫を受けた枝葉は、いつもより鮮やかに見えた。
「誰かが、わたしの名前を呼んでいるの」
「名前、ですか」
不思議そうな声音。無理もない。
シラユキが吐いた白い溜め息は、朝の森に吸い込まれるように溶けていった。
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