11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/18(土) 08:03:54.12 ID:0FhXK3hqo
昼になれば少しは暖かくなるけれど、この街の朝は、凍えそうに寒い。
けれど、この張りつめたような冷たい空気が、わたしは嫌いではなかった。
「誰かがわたしの名前を呼んで、どこかに連れて行こうとするの」
「いったい誰が?」
「……分からないけど、男の人、だと思う」
わたしの声は、後半になるほど小さく萎んでいったと思う。
この街に来る前の記憶を、わたしは持っていない。
そしてわたしは、この街に来てから男の人と会ったことがない。
シラユキ以外の人の存在は、わたしにとっては一種の情報でしかない。
それにわたしは、自分の名前だって持っていないのだ。
案の定、シラユキは怪訝そうな顔をした。わたしは話したことを少し後悔した。
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