113:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:37:08.84 ID:J60wAoTTo
思わず声をあげかけて、口元を押さえる。
「早くしろ。見つかりたいのか」
声は言う。わたしは少し迷ってから暖炉を覗き込んだ。
強迫観念に近い感覚。わたしはあの無機的な男から逃げなくてはならない。
暖炉の中は意外と広かった。それこそ本棚のひとつくらい入りそうな広さだ。
手は右側の底から伸びている。どうやら穴が開いているようだった。
わたしが近付いてきた気配に気付いてか、腕が引っ込む。
わたしはその中を一度覗き込んだ。暗くてよく見えない。
昨日、屋敷中を見て回ったときは、この暖炉は見逃していた。暗くて、中がどうなっていたかなんて気にしなかったのだ。
扉が開く音。暖炉の位置は書斎机に隠れているが、猶予はない。
足音。わたしは焦って、穴の中に足から飛び込んだ。
思ったより高さはなく、足はすぐついたが、階段のようになっているらしい。
慌てて体を屈める。意外なほど、空間は広がっていた。
わたしの身体が完全に暖炉の下に入ると、静かに、何かが閉じる音がした。
かすかに差し込んでいた光がなくなり、真っ暗になった。蓋? 蓋が閉められたのだ。
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