265:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/03(月) 07:36:27.68 ID:7IYKPM3ao
◇
しばらく経ったあとだというのに、わたしがふたたび屋敷に向かったとき、シラユキはまだそこに立っていた。
まるで待ち構えるみたいに。
わたしと彼女は、傘をさしたまま少しのあいだ視線を合わせた。
それだけで、彼女の方からも何か話があるんだろうと分かった。
わたしにそう分かったということは、彼女の方も、わたしから話があることが分かったのだろう。
シラユキはそれから視線を落として、顔をわずかに俯けた。悲しげな表情だった。
でも、なんだか不安定な悲しみ方だった。憤りと諦めを行き来しているような、そんな悲しみ方。
「少し、歩きませんか」
わたしは散歩から戻ってきたばかりだったけれど、頷いた。
どうせ、屋敷の中に戻る気にはなれなかったのだ。
彼女と並んで歩き出すと、なんだか懐かしいような気持ちになった。
ツキと並んで歩いたときにも、こんな感覚があった気がする。
いや、懐かしいと思うのも、当たり前か。
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