過去ログ - 少女「雨が止んだなら」
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268:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/03(月) 07:39:22.42 ID:7IYKPM3ao

「わたしは、ここじゃない世界に生きていたんだよね?」

 シラユキは答えなかった。雨の音が、かすかに強まった気がした。

「そこで、どんな理由かはわからないけど、わたしは……」

 言葉にするのが、少しだけ怖かった。でも、それだけだった。
 たかだか、少し怖い程度だった。

「……死んだ。それも、ただ死んだんじゃなくて、自分の意思で」

 掠めるのはわずかな記憶ばかりだけれど、反芻するたびに肌があのときの冷たさを思い出す。
 水の唸りが獣の咆哮のようだった。夜の静寂を嵐が吹き飛ばしていた。
 灯りも見えない暗闇の中で、澱んだ水流のすさまじい勢いと、突き刺さるような冷たさだけを感じた。

 その冷たさを、徐々に感じられなくなっていった。
 



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