268:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/03(月) 07:39:22.42 ID:7IYKPM3ao
「わたしは、ここじゃない世界に生きていたんだよね?」
シラユキは答えなかった。雨の音が、かすかに強まった気がした。
「そこで、どんな理由かはわからないけど、わたしは……」
言葉にするのが、少しだけ怖かった。でも、それだけだった。
たかだか、少し怖い程度だった。
「……死んだ。それも、ただ死んだんじゃなくて、自分の意思で」
掠めるのはわずかな記憶ばかりだけれど、反芻するたびに肌があのときの冷たさを思い出す。
水の唸りが獣の咆哮のようだった。夜の静寂を嵐が吹き飛ばしていた。
灯りも見えない暗闇の中で、澱んだ水流のすさまじい勢いと、突き刺さるような冷たさだけを感じた。
その冷たさを、徐々に感じられなくなっていった。
633Res/436.26 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。