332:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/07(金) 06:06:44.94 ID:UQU3TNtlo
「どうして、彼を助けたいの?」
不意に、声が聞こえた。わたしはそれを何かの錯覚だと思った。
でも違う。以前にも聞いたことのある声。それはわたしの頭の中に直接語り掛けてきているのだ。
「だってそうでしょう? どっちにしたって、同じじゃない?
彼が生きようと死のうと関係ない。自分がどうなったって関係ない。
だって、あなたは死んでしまうつもりなんでしょう?」
うるさいなあとわたしは思った。そのことは考えないようにしていたのに。
通路はずっと伸びている。引き伸ばされた棺みたいに。
暗闇にわたしの足音が響く。ここからは雨の音は聞こえない。
雨の音がしない場所。そういえば、そんな場所は、この世界には他になかった。
意識してみると、雨の音が聞こえないのは、少し不思議な感じだった。
「放っておいて」
とわたしは言った。でも答えはなかった。当たり前だ。ここには誰もいないんだから。
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