334:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/07(金) 06:09:43.18 ID:UQU3TNtlo
悲しそうな絵だった。空は灰色に歪んでいて、湖面は暗かった。空虚な静寂がこちらにも伝わってくるほどだ。
でも、目を引くのはそうした部分ではない。
肩越しに振り向いているように見える少女の顔の部分は、ズタズタに破かれていた。
何本かのフォークが突き立っている。壁の下にはそれでも足りないというようにフォークやナイフが落ちている。
わたしは怖くなった。
居ても立ってもいられない気持ちになって、部屋を出ようとする。
扉に手を掛けたとき、不意に気配を感じた。
何の気配なのかは分からない。でも、背中越しに誰かがこちらを見ている気がする。
この部屋には、誰もいなかったはずだ。
それなのに、気配はたしかにあった。
くすくすと含み笑いすら聞こえてきそうだった。錯覚だ、とわたしは思う。
でも、振り向けなかった。振り向くのが怖かった。
ここに来てはいけなかったのだ、と思った。
視線を感じながら部屋を出た。扉を閉めると、静寂が辺り一帯を支配した。
でも、さっきの部屋の中だって、何の物音もしない、静かな場所だったはずなのに。
それ以上は考えないようにした。誰もいなかった。そのはずだ。
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