429:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/13(木) 07:02:42.37 ID:gz5u5IpNo
書庫に這い出るとき、埃のせいで咳が出た。
泥だらけのレインコートをその場で脱ぎ捨てる。
走ることが嫌になるよりも、ずっと前、あなたはどうしてそんなに醜いの? と母はわたしに訊ねた。
初めてそう言われるまで、わたしはそんな自覚を持ったことはなかった。
自分の容貌について深く考えたこともなかった。
でも、母が言うならそうなのだろう。そうか、わたしは醜かったんだ。そう思った。
鏡を見つめる日々が始まった。醜いと言われてから鏡を見てみると、実際に醜く見える。
どうしてわたしはこんなに醜いんだろう? そう思った。そう問いかけ続けた。
自分の顔を見ることが、段々と怖くなってきた。人前に姿を出すことも、怖くなった。
本当は外にだって出たくなかった。でも、家の中に居る方がずっと怖いのだ。
母の視線には、憎しみや嫌悪ですらない、憐れみに近いものが宿っていた。
本当にどうして、この子はこんなに醜いんだろう、と、そう言いたげな瞳。
その目で見られると、わたしはすぐにでも消えたくなった。
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