446:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/14(金) 06:41:13.84 ID:DzmBzCz9o
父が再婚したのは、わたしが小学校に入ったくらいの頃。
再婚に際して、ふたりは慎重だった。なるべくわたしに負担がかからないよう配慮していた。
わたしは、子供ながらに、気遣われていることを、ちゃんと理解していた。
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2013/06/14(金) 06:41:58.82 ID:DzmBzCz9o
三人で顔を合わせることがあると、二人はいつもわたしに気を遣ったような表情になる。
わたしはそれがすごく嫌だった。でも、父も母もそれを望んでいた。
母と会った日の夜、父はわたしに必ず、「どうだった?」と訊ねた。
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2013/06/14(金) 06:42:43.86 ID:DzmBzCz9o
父もきっと、母とわたしの間に、何か奇妙な雰囲気があることには気付いていただろう。
でも、信じたくなかったのだろう。
上手くやっていけていると、思って居たかったのだろう。
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2013/06/14(金) 06:44:40.09 ID:DzmBzCz9o
◇
ツキと初めて会った時のことを、わたしは思い出した。
わたしが走ることを拒否して、でも結局何も変えられず、ふたたび走り出した頃。
450:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/14(金) 06:45:09.30 ID:DzmBzCz9o
彼はそれからしばらく、何かどうでもいい話をした。
学校で起こったこと、家族と喧嘩したこと。そういうことを延々としゃべり続けた。
ひょっとしたら日が暮れても続けるつもりなんじゃないかと思うほどだった。
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2013/06/14(金) 06:45:44.51 ID:DzmBzCz9o
ずっと雨が止まなければいい、と思った。
そうすればわたしは走らずに済むかもしれない。
グラウンドが使えないくらいに雨が降ってくれれば、わたしはもう走らずに済む。
452:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/14(金) 06:46:19.34 ID:DzmBzCz9o
「走りたくない」
とわたしは言った。彼は困ったような顔をした。
本当に戸惑っていたようだった。どうしてそんなことを言うのか分からない、というふうに。
453:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/14(金) 06:47:55.06 ID:DzmBzCz9o
クラスメイトたちは、わたしが走ることを期待している。
そしてわたしが走り出せば、みんながひそひそと笑うのだ。
先生に気付かれないように、でも、視線と言葉をひそかに交わして。
454:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/14(金) 06:48:46.23 ID:DzmBzCz9o
◇
わたしは書斎机の上に拳銃を置いて、それを見つめた。
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2013/06/14(金) 06:49:46.61 ID:DzmBzCz9o
つづく
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