580:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/23(日) 03:31:58.48 ID:seth9kfao
「アヤメ」
彼はもういちど、わたしの名前を呼んだ。それきり、しばらく黙り込んでしまった。
何度も苦しそうな顔をした。後悔しているようにも見えたし、何かを言いあぐねているようにも見えた。
どれが本当なのか、わたしにはよく分からない。
「ずっと一緒にいることはできない」
そう、彼は言った。そうだよ、とわたしは思った。ずっと一緒にいることはできない。
「でも、雨が止んだからって、傍にいられないわけじゃない。
一緒にいたいなら、一緒にいたいって言ってくれてもよかった。
俺はそれを嫌がったりしない。ずっと一緒にいられないとしても、ずっと離れたままってわけでもない」
「……うん。そうだね」
「お前がいなくなるなんて嫌だ」
彼はもう一度そう言った。
「ずっと一緒にいることはできない。俺はお前の痛みを分けてもらうことも、肩代わりすることもできない。
でも、だからって、ずっとひとりぼっちで戦わなきゃいけないわけじゃない。俺はそう思うよ。
雨が降っている間しか、人に甘えられないなんて理屈はない。お前はもっと泣きわめいて、誰かを頼ったって良かったんだ」
「でも、それが上手にできなかったんだよ」
だってそれは、明らかにわたしの問題なのだ。
誰かが関わって、うまく解決できる種類の問題ではないのだ。
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