598:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/24(月) 04:03:10.48 ID:k0zfLIWso
「わたし、帰るね」
とわたしは言った。シラユキは、また、困ったように笑った。
それから小さく頷く。彼女の仕草はいつだって変わらない。
皮膜越しに、ツキはわたしの名前を呼び続けている。
そういえばわたしも、いつだったか、こんなふうに誰かの名前を呼び続けたことがあった。
シラユキが死んだときだ。
だとしたら、ツキをもう一度あんな目に遭わせるわけにもいかない。
少なくともわたしは、まだ選ぶことができるんだから。
その先がどんなものであったとしても。
シラユキは、何かを言いたそうにしていた。その表情は笑っていたけれど、どこか寂しそうだった。
「ありがとう」
とわたしは言った。
彼女ははっとしたような顔をして、すぐにまた、取り繕うように笑った。
大事なことを声に出して伝えるのはすごく難しい。
「ごめんね」
633Res/436.26 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。