608:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/25(火) 07:17:29.97 ID:tPA7g4lio
まだ景色は暗闇だ。
なぜだろう。視界を覆っているものは、いったいなんなのだろう。
暗闇の中で、誰かの声が聞こえた気がした。
それはずっと遠くから聞こえているようにも、すぐ近くから聞こえているようにも感じられた。
音はなんだかぶよぶよと歪んでいる。だから、その声が現実のものなのかどうか、確信が持てない。
真っ暗闇だから、誰かが傍にいるのかどうかも、分からない。
どうして、こんなに暗いんだ?
何かがわたしの身体を叩いている。身体のそこら中を。
雨だ、とわたしは思った。
それも激しい雨。
でも、雨が当たっているのはほんの一部分だけで、ほとんどの場所は雨を受けていない。
それでも身体は濡れているようだった。
不意に、瞼に雫が当たるのを感じた。
そのときにようやく気付いた。視界を覆っているものの正体は、自分自身の瞼だった。
瞼を開けていないのだから、光を捉えられないのは、当たり前だ。
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