13:お団子 ◆bZ4I4TB4eY
2013/05/22(水) 02:56:21.37 ID:PfMthyZw0
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…………正直、とても苦々しく思った、
意気揚々とした彼女を前に、僕はほんの十秒前まで逃げ帰ろうとしていたのだ、それはもう、重々しい空気と言ったらなかった。
空気に押しつぶされる、という表現がある、
まさか自分が味わう事になろうとは思ってもみなかった、一体彼女とは何から話したらいいのだろうか。
「柿本先生、まずはこっちに」
忘れてしまっていたが、ここは都市ホテル内のロビーなのだ、大の大人が二人も揃って何をしているのだろうか、
誘はソファーの方に手を差し伸べて催促してくる、
僕はどちらかと言えば下座に座りたいのだが、恐らくは不自由帳に、
いや、どうだろうか、いくらなんでもそこまであの親は誘に求めたのだろうか?
今となっては確かめようもない事実となってしまった、が、そんな事を心配する前に、彼女は眼の前の椅子に座っていた、
上座と下座の間は何と言ったか、それに関してはどうでもいい。
多分資料を広げるとしたらそこが一番最適だったのだろう、僕は遠慮なく下座に座らせて貰う事とした。
読者の皆様に担当受け継ぎの場面を見せることなどできないので、ここからは割愛させていただく事とする。
その間も、僕は一つ聞きたかったことがある、これまでの生活の事、ではなく、どうして担当編集を目指したのか、である。
僕はそれを聞く事とした、
どうしてこの世界に入ったのか。と、世界、という程大きくも無いしそこまでして聞く事でもなかったかもしれない、
無理に聞く事でもなかったかもしれないと、今になって思うが、その時、珍しくも僕は後先を考えずに行動をしていた。
それを聞いた誘は、少し困ったような顔を見せた、十年前にも、こんなことがあったような。
「……私は、あの後、少し迷っていました。どうすればいいのか、海外にまで行って、一体どうしたらいいのか、そしたら、見つけたんです」
十年前のお話を。
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