12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/21(火) 16:20:55.01 ID:1Ac64vbSo
気付いたときには身体はもう動いていた。バランスを崩し踏み台から転がり落ちそうになっている初瀬の身体を受け止める。
――が。
どかっ! ……ばさささささー
「いっ……たぁー」
段ボールの無慈悲な追い打ちが、やえの頭に直撃した。
軽く涙目になりながら頭をおさえるやえ。
「……っ、先輩大丈夫ですか!? ごめんなさい、私の不注意のせいで……」
「いや、平気だ平気。それより初瀬こそ怪我はなかったか?」
「先輩のおかげで私は大丈夫です! 先輩こそ、頭腫れたりしてないですか?」
「い、いいからっ! 触るなっ!」
「そういうわけにもいかないですよっ!」
心配そうにやえの頭を確認する初瀬の目に、信じられないものが入ってくる。
「先輩、これ……ハゲ?」
「……だから見られたくなかったんだよ……ああそうだ、ハゲだ」
「まさか今頭打ったからじゃ……!?」
「昔のことだよ。大学のとき、怪我してな。傷自体はすぐに治ったんだが、そのあとなかなか生えてこない」
隠せないこともない場所だから、知ってるやつも少ないんだけどな、とやえは続けた。
こめかみのすぐ上くらいのところに、親指の先くらい地肌が見えているだけだから少し髪を伸ばせば簡単にフォローは効くんだとも。
「へぇー、いったい何やったんです?」
「それが、覚えてないんだ」
「へ?」
「何しろやったのが頭だからなー、気付いたときには病院のベッドの上だった」
「ふーん、そうなんですか。先輩のことだからニワカ100人と喧嘩とか……」
「……お前、私のことなんだと思ってるんだ?」
やえのジト目に、あはははーと笑って誤魔化そうとする初瀬。
どこか納得がいかない風のやえだったが、段ボールの中身が散乱してしまった周りの惨状に気付くと顔をさーっと青ざめさせて、
「そんなことより掃除の続きだ! このままじゃ本当に日が暮れても終わらんぞ!」
散らばった段ボールの中身――中に入っていたのは写真だった――を乱雑にまとめながら、二人は今度こそ集中して掃除に取り掛かり始めた。
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