過去ログ - やえ「おーい、さびしんぼう」
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14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/21(火) 16:22:05.38 ID:1Ac64vbSo
「先輩の前でこんなこと言うのもアレですけど、私、もう26なんですよ。四捨五入すればとっくに三十路なんですよ。
 ただ、やってることなんて学生のときからそんなに変わらなくて……楽しいけど、でもこのままでいいのかなって。
 昔はね、大人になったら大人の楽しみが増えると思ってたんですよ。落ち着いたり、些細なことに幸せを見いだせるようになったり。
 でも実際、そんなことないんですよね。まだまだ全然幼稚なままで……本当の幸せはどこかにあるはずだって、まーだ夢見てる」

初瀬の言葉が、耳に痛かった。やえ本人も似たようなことは感じていたからだ。
それこそ何年も前――今の初瀬と同じような年のころからずっと感じていて、それが未だに解消されていない。
そんなやえに、初瀬にかける言葉が出てくるはずもなかった。ただ黙って、初瀬の言葉を聞くだけだ。
その後も初瀬は酔いのままに己の思う幸せの定義をまくし立てた。
やえもだいたい同じようなことを考えていて、でもやっぱり、それは違うんだろうな、とぼんやり感じていた。
初瀬だって喋りながら、ズレているのは自分のほうで、世の中の人間の大多数はそれに納得出来ているんだろうと知っているはずだ。
それでも納得出来ないわだかまりをこうやってぶつけてるんだろうなと、まるで自分のことのように分かる。

べらべらと喋り続けた初瀬がついに疲れて、酔いと疲れで船を漕ぎ始めたころに大掃除お疲れ様会はお開きになった。
送って行こうか、というやえの申し出を、先輩にこれ以上お手数お掛けするわけにもいかないからと丁重に断った初瀬と別れて。
やえは一人で帰路につきながら、今日の初瀬の言葉の中で特に印象に残った一言を思い出していた。

『私、大人の幸せってこんなものじゃないと思ってたんです。大人の幸せって……妥協することなんかじゃ、ないですよね?
 これで幸せなんだって自分を騙して……妥協して。みんなそんな風に生きていって、本当に、幸せなのかな』


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