過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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159: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 11:59:46.63 ID:+j7WNh9Vo
何日かに渡り、彼女を訪れ、話した。
不思議な事に、話したことも覚えているし、騎士の顔も忘れてなどいない。
それどころかよく気がつき、騎士の服についたソースの小さな滲みまでも、暗闇の中で見つけて指摘した。

その一方で、彼女は領主の事など、一つたりとも覚えていない。
以下略



160: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 12:01:44.19 ID:+j7WNh9Vo
淫魔「騎士さんが、『五年』って教えてくれたからですよ。……それと、毎日、会いにきてくれるから……」

騎士「何だと言うのだ?」

淫魔「会いに来てくれるから、ちゃんと『時間』が流れてるんだなぁ、って……思い出せたんです〜」
以下略



161: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 12:02:43.15 ID:+j7WNh9Vo
あれから一週間が過ぎる。
彼女の所へは、行かなくなった。
頑なになった心は、もはや、彼女を信じられなくなったからだ。
そして本来の『仕事』から、離れる時など無くなってしまったから。

以下略



162: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 12:03:48.09 ID:+j7WNh9Vo
事が起こったのは、早暁だった。
夜が白み始めて、ようやく騎士が自室で仮眠を取っていた時の事だ。
夜を過ぎた騎士が眠り、使用人達が起きて働き始める、ほんの間隙だ。
あまりの手際と間の良さは、邸内に『ネズミ』が潜んでいた事さえ疑う。

以下略



163: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 12:06:12.79 ID:+j7WNh9Vo
領主「げっ……下民、どもがっ! ……何をしている、貴様! さっさと、皆殺しにして来ないか!」

騎士「無理です。それより、お逃げになるがよろしいかと」

領主「何だと!? 怖気づいたか!」
以下略



164: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 12:07:48.69 ID:+j7WNh9Vo
――――――――

淫魔「……ん。……よく、寝たぁ。お目覚めすっきりです〜」

彼女が眼を覚ました時、そこは、底冷えのする暗闇の牢獄では無かった。
以下略



165: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 12:08:53.66 ID:+j7WNh9Vo
あの時、不思議と体が動いた。
燃え盛る屋敷の中に残っていた淫魔、そして逃げ延びつつある領主と、自身。
何一つ、理由など無かったと思っていたのに……領主が馬に跨った所で、その踵は返ってしまった。
そして、騎士は単身、業火の中へ。

以下略



166: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 12:09:28.06 ID:+j7WNh9Vo
屋敷から出ると、そこには、雑多な武器で滅多刺しにされた、領主の死体があった。
領主を討って沸き立つ領民達は、武器を捨て、叫びを上げていた。
大路には初めて見る活気があり、ほとんどの民がそこにおり、あちこちで炊煙まで上がっていた。

裏道を、人目を掻い潜るようにして逃げ延びた。
以下略



167: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 12:10:05.77 ID:+j7WNh9Vo
――――――――

淫魔「なるほど、そういう事があったんですか〜。だめですねぇ、ちゃんと火の始末しないと〜」

騎士「……『火の用心』を怠った結果だとは私も思うが、どうせ違う意味なのだろうな」
以下略



168: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 12:10:38.90 ID:+j7WNh9Vo
長い巻きスカートで、尻尾を隠す事ができた。
頭巾をかぶれば、角も隠せた。
ウエストに搾りのついた上衣は窮屈そうで、ボタンの上から二つまでが留まらないらしい。
最後にくるぶしまでが隠れるブーツを履けば、その姿は『人間』とまったく変わらなかった。

以下略



169: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 12:11:14.42 ID:+j7WNh9Vo
騎士「よく覚えているな、お前」

淫魔「燃える水が噴き出るお山に、海に浮かぶ氷の島、お話してくれたじゃないですか」

騎士「やはりお前は、馬鹿でも無いな。一つ、教えてくれないか」
以下略



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