過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sagesaga]
2013/05/22(水) 00:03:07.18 ID:GshVNNRdo
勇者「……長かったな」

木から削り出した不格好な器に口をつけてから、火を囲んで座る仲間へと語りかける。
なけなしの干し肉と野菜の残りで作り、ささやかな塩で調えたスープは、まるで舌を試しているかのように薄味だった。

戦士「まだだ。真の戦いは、『これから』だろう?」

彼はそんなスープを構わず飲み下して空にし、おかわりのもう一杯を器に取った。
顔を横切る魚骨のような傷と浅黒い肌が特徴的な男だ。
食事の最中にあってもその耳と鼻、そして肉体は周囲を警戒し続けていた。

一度だけ、この男を見ていて、面白い事があった。
それは、テントで眠っていた時……彼の近くに、蜂が飛び込んできたのだ。
追い払おうと、または起こそうかと逡巡したところ――彼は一瞬で、この蜂を二本の指で挟み、潰してしまった。

眠っていようとも、彼の研ぎ澄まされた神経は働いていた。

勇者「…ところで、僧侶は? 魔法使いも……」

戦士「ああ……馬を、元の場所へ帰しに行ってるよ」

勇者「もう、馬車は必要ないものな」

戦士「馬屋のおやじも驚くだろう。馬車と馬が、気付いたら帰ってきてるんだ」

勇者「馬に別れを告げなくていいのか?」

戦士「ガラじゃない。お前はどうなんだ?」

勇者「……多分、泣いてしまうから遠慮するよ」

戦士「泣き虫の勇者様か。そんなので魔王と戦えるのか?」

勇者「やれるさ。……みんなとなら、やれる」


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