過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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55: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/24(金) 00:29:15.16 ID:zNvxktpKo
もはや、時間は無かった。
背後を見ればほぼ瓦礫に埋まり、行きて戻りし魔城の回廊は存在しない。
最後の勇者の『作戦』を反故にはできなかった。

魔法使いが杖を一振りすると、赤く輝く光の扉が、目の前に開いた。
その先には、段々と暗雲を薄めていく、魔城の空が見て取れる。
ここをくぐってしまえば、もう、戻れない。
魔王を倒し、その城を出て、そこで全ての物語は終わる。

魔法使い「……やだ。やだ、よぉ…………!」

帰還の扉を前にして、『涙』に追いつかれてしまった。
踏み出せばそこには『外』があり、それが『彼』の望みだとも分かっているのに。
それでも、脚が動いてくれない。
この扉は、『世界』へと繋がっている。
――――――『彼』を欠いて、それでも回り続ける無慈悲な歯車の箱へ。

滂沱の涙が鎖となり、魔法使いを、縛り付けてしまう。

戦士「何をしている!? 早く!」

魔法使い「置いてなんて行けない! ……あんた、何で平気なのよぉ!」

僧侶「魔法使いさん! もう、道が……!」

見えていて、理解もできていた。
もう戻れる道も行く道も埋め尽くされ、目の前の扉をくぐるしか無い。
それでも――――最後の諦めを、つけられない。
感情の置き場所が見つけられないまま彼女は踵を返して、僧侶はそれを、組み合うように押さえつけた。

魔法使い「離して……! 離せ! 離せぇぇっ!!」


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