過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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75: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/25(土) 02:27:53.48 ID:QKtUJVFRo
メインホールの喧噪に掻き消されそうな、小さな嗚咽が聴こえた。
空気を振り払うように、再びグラスに口をつけた。
今度は妙に苦くて、香りも感じなかった。
鼻の奥で何かが突っ張っているような感覚がして、つい、顔をしかめる。

王女「もう一度、訊いて……いい、ですか」

魔法使い「うん」

王女「勇者様、の……最後は、どう……でしたか?」

魔法使い「血まみれでさ。折れた剣握って、真っ二つにした魔王の上に立ってた。……カッコ、つけすぎ」

王女「……その後は?」

魔法使い「帰りたい。でも帰れない、でも死にたくない。そんな時、人ってどんな顔をすると思う?」

王女「…………」

魔法使い「さっきも言ったけど、さ」

顔を上げると、王女の瞳が、真っ直ぐにこちらへ向いていたのが分かった。
月から湧いた清水のような涙の粒が、ほっそりとした顎に向かって流れていた。

魔法使い「あんたのせいじゃない。……あんたは、これっぽっちも悪くなんてない。……ただ、ね」

最後の『強敵』の言葉が、木霊する。

魔法使い「『雷』は、『雨雲』と一緒に、遠くへ行っちゃったのよ。みんなが怯えないように」


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