過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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85: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/26(日) 02:27:04.28 ID:UMPAG6Zoo
広場から馬車に乗る時、彼女はもう一度だけ、深くお辞儀をした。
その顔は満ち足りていて、別れの哀しみさえも見せない。
もう、彼女は吹っ切ったのだろう。
勇者と魔王がいなくなり、この平穏が続くのだと、信じた。
彼女の職業は、『僧侶』。
『信じる』ことと『祈る』ことを御業へと変える、恐らくは唯一の職だから。

そして、世界を救った、癒しの御手は再び修道院へと戻った。
幌馬車の中で、出立にふさわしい初夏の空の下、がらがらと音を立て、石畳の上を馬車が駆ける。
残された二人は、それを、見えなくなるまで目で追って――――やがて、逆方向へ同時に目を向ける。

広場の中央には、人だかりができていた。
急造の演壇がこしらえられ、そこに誰が立つのかと、民衆は囁き合う。

魔法使い「……はじめよっか」

戦士「ああ。……俺達の、最後の『クエスト』を」

言うと、戦士は帯びた剣の鞘尻を使い、近くの路地にある木箱を叩いた。
人が十分に隠れられるほどの大きさで、側面には細工がしてあり、簡単に開けるようになっている。

魔法使い「王女様。あんた……本当に大丈夫?」

中から出てきたのは、多少くたびれてはいるものの……純白に装った、王女だった。
長い金髪は少しはねている。
それを丹念に手ぐしで整えながら、彼女は、大路へ出てきた。

王女「はい、問題ありませんよ。……それでは、よろしく、お願いいたします」


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