過去ログ - 恵美「もしも魔王の正体に気づかなかったら」
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[sage]
2013/05/24(金) 17:08:55.46 ID:raX+wY0oo
雨はすでに上がっていた。
職場を出た私は、足早に幡ヶ谷駅目指して歩いている。
18時には職場を出られるはずだったが、終業間際にクレームが入り、
それがやたらと長引いたのだ。基本的に受けた電話を終えるまで帰ることはできない。
おかげで今の時刻は21時近く、夕食には少し遅い時間だ。
恵美「まだ居るかしら、あの人……」
彼があの後バイトに向かったのは間違いないだろうが、この時間まで働いている保証はない。
どうか、店に行ったらもう帰っていましたなんてことになりませんように。
半ば祈るように願いながら歩き続け、目的の店に辿り着いた。
マグロナルド。この世界のことに疎い私もよく知っている、
ハンバーガーの大手チェーンだ。
店の前に立つと自動ドアが開き、初夏の陽気に加えて
歩いてきたせいで汗ばむ身体に心地よいエアコンの風が吹く。
夕食の時間とずれたせいか店内の客はまばらで、カウンターには誰も並んでいない。
いらっしゃいませと数人の店員が声を出す中、一際よく通る大きな声があった。
瞬間、そちらに目をやると、彼がいた。
レジは三つあったが、迷わず彼の立つレジへ進む。
カウンターに近づくと、彼は自然な笑顔を浮かべながら接客に入る。
青年「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」
その態度は完璧と言っていい店員のそれで、だからこそ私は戸惑った。
私のことなど覚えていないのだろうか。
行きずりの女を助けたことなど、彼の中では終わった話なのだろうか。
そうだとしたら、この流れで注文をしないのは不自然で、相手にも迷惑だ。
自分でも意外なほどの落胆を感じつつも、何とか注文をしようとカウンターのメニューを見つめると、
青年「本当に来てくれたんだ。ありがとう」
周りには聞こえない程度に抑えた声で、彼はそう言った。
顔を上げると、店員としてのそれに若干の親しみを加えた笑顔が見えた。
恵美「……当然です。恩を返さないような人間に見られるのは心外ですよ」
安堵のせいか、少しの棘を加えた冗談が口を突いて出る。
彼はごめんごめんと笑った。
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