過去ログ - 佐々木千枝「千枝は、わるい子です」
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3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/06/09(日) 00:27:54.70 ID:j7T+CQqZ0
遊園地の敷地にある大きな池。水上には幾つかボートが浮かんでいる。その内の一つに、私とプロデューサーさんは乗っていた。
お仕事は夜からの予定なので、しばらくは遊んでいて良いらしい。そのおかげで、私はプロデューサーさんとの時間を楽しめている。私の対面にいる彼がオールを漕ぐと、ゆっくりとボートが前進する。私が試しに漕いでみたときは、まったく進まなかったので、彼の手腕に心底感心した。
「わ、プロデューサーさん、とっても上手です!」
「初めてやってみたが、意外と上手くいくもんだなぁ」
「揺れも少ないし、凄いですね。ずっとここにいたいくらいです」
「おいおい、褒めすぎだろう」
しばらく会話に興じた後、私は辺りに浮かぶ別のボートを見て、思うことがあった。どのボートの上にも、男女二人の姿が多いのだ。和気藹々とした雰囲気をかもし出す彼らは、きっとカップルなのだろう。
そうなると、私とプロデューサーさんはどういう関係に見えているのだろうか。
兄妹、親子、親戚。私が思い浮かんだのは、どれも自分の期待したそれとは違う関係だ。その事実が心に重く圧し掛かり、自分は子供でプロデューサーさんはオトナだということが、否が応にも自覚させられる。凹んでしまったことが顔に出ていたのか、彼が心配そうに体調を尋ねてきた。私はそれに答えることができない。
「千枝たち、どういう関係に見えるのかな……」
不安をつい、言葉にして零してしまう。我に返り、私は慌てて訂正した。
「あ、な、なんでもないです!」
「……それなら良いが。そろそろ陸に戻るか。千枝も疲れたみたいだしな」
私の言葉には触れず、プロデューサーさんはそう言った。
プロデューサーさんはどうなのだろうか。客観的に見て、彼の目に私と彼はどういう関係で映るのだろうか。気になったが、ボートの上でも、陸に戻っても、私がそれを訊くことはなかった。
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